国際がん研究機関(IARC)の発がん性評価方法
国際がん研究機関とは
1969年、国際がん研究機関は人への化学物質の発がんリスクの評価と、個々の化学物質に関するモノグラフ(専門書)を作るために発足しました。その後、化学物質の混合物や放射線、ウィルスなどの化学物質でないものも評価するようになりました。
国際がん研究機関の発がん性評価は、その物質の発がん性の証拠の程度について分類したものであり、発がん性の強さを評価したものではありません。ここでの評価プロセスは、まず、人に対する証拠と動物に対する証拠を別々に評価し、その結果をもとに発がん性分類への総合評価を行います。総合評価の発がん性分類には以下の4つの分類があります。従来、発がんハザードの分類は5段階でしたが、2019年1月に、モノグラフの前文のが改訂版が発表され、「グループ4:おそらく発がん性はない」は廃止され、4段階の分類になりました。また、これらの評価は、規制や法制化に対する勧告を示すものではありません。
発がん性分類表
フリックしてご覧ください。
グループ | 分類基準 ※1 | 分類結果例 ※2 | 現在までに分類された 物質等の総数 (2019年9月23日現在) |
---|---|---|---|
1 | ヒトに対して発がん性がある (carcinogenic to humans) |
カドミウム、ダイオキシン、大気汚染、アルコール飲料、X線、ガンマ線、アスベスト、ディーゼル排ガス、PCB、タバコ(受動・能動)、ホルムアルデヒド、紫外線、コールタール、太陽光、ヘリコバクターピロリ菌 | 120 |
2A | ヒトに対しておそらく発がん性がある (probably carcinogenic to humans) |
クレオソート(木材の防腐剤)、鉛化合物(無機)、アクリルアミド、赤肉、日内リズムを乱すシフト労働、理容・美容労働、熱い飲み物、高熱の揚げ物作業 | 82 |
2B | ヒトに対して発がん性があるかもしれない (possibly carcinogenic to humans) |
鉛、ガソリン、クロロホルム、漬物、ガソリンエンジン排ガス、ドライクリーニング労働、超低周波磁界、無線周波電磁界 | 311 |
3 | ヒトに対して発がん性を分類できない (cannot be classified as to carcinogenicity in humans) |
カフェイン、原油、水銀、蛍光灯、お茶、コーヒー、コレステロール、静磁界、静電界、超低周波電界 | 500 |
- ※1 分類基準は分類の基本的な考え方を説明したものです。
- ※2 表中の分類結果は、新しい証拠をもとに変わることもあります。
発がん性分類表
フリックしてご覧ください。
- S(sufficient evidence)
- 発がん性があるとする十分な証拠
- LS(less than sufficient evidence)
- 発がん性があるとするには十分ではない証拠
- L(limited evidence)
- 発がん性があるとする限定された証拠
- I(inadequate evidence)
- 発がん性があると判断するには不適切な証拠
- NG(do not fall into any other group)
- 他のいずれのグループにも分類されない
- S*1
- 実験動物で発がん性の十分な証拠があり、かつ作用因子が曝露した人に実験動物と同じ様な発がんのメカニズムで作用することを示す強力な証拠がある場合。
- L*2
- 人で発がん性の限定した証拠のみがある場合。
- S*3
- 実験動物で発がん性の十分な証拠があり、かつその発がん現象は人においても同様なメカニズムによって生じるという強力な証拠がある場合。
- S*4
- 実験動物での証拠が十分であるが、その実験動物での発がん現象のメカニズムが人では同様に機能しないという強力な証拠がある場合。
発がん性分類の例
フリックしてご覧ください。

電磁界に対する専門機関の評価など 一覧
電磁波